2015年1月27日火曜日

地名と歴史・・・異国との交流による言語的な影響

Trondheimというノルウェーの都市の名を聞いたとき、「トロントハイム?トロンドヘイム?」いう疑問がすぐに沸いた。
前者はドイツ語読み、後者は古ノルド語読みした。
私の元より持っていた言語知識から、理由付きで二通りの読み方が浮かぶ。

現地の発音では「トロンヘイム」となり、発音記号"ae"(æ)が正しいようだ。
日本では「トロンハイム」の方が馴染む(Googleのノルウェー語音声合成でもこちらだった)。

ノルウェー語では"d"が特定条件で発音されないらしい。
「ヌールラン"Nordland"」がこの「"d"が発音されない法則」の好例である。
去年はフランス語で発音されない文字とその法則について語ったが、今回ノルウェー語でそれを解明する気概はない。

続いて疑うことは、「トロンハイムという読み方が諸外国で正しい」ことになってる理由だ。
ノルウェー語で"ei"が「エイなのかアイなのか」という疑問さえ、もはや解明する気概もないのだが、やはり古ノルド語的に見ると「ニブルヘイム」などの通り「エイ」となる。
したがって、他国に統治された歴史があってこのように「ハイム」と発音するようになったのではないか、というのも、地名でも学名でも慣用的な発音はそういう歴史があることが常である、と自分の法則を思い出した。

実際にこの都市は古来「ニーダロス」と呼ばれていたそうだ。
この「トロンヘイム」という名はスウェーデン・デンマークだかナチスドイツだかの時代に出来て、仮に前者の時代であっても、ドイツ期を経てドイツ語風に読むようになったのではないか。
まあ、もしそうなら、"d"が発音されないノルウェー語の法則も含まれないけど。
結局は私の知識ではこのことさえ解明不能だし、解明の意志も尽きている。



このように、他国では異国の言語に影響されて地名が異国風になることも多い。
それでは日本はどうか、「南アルプス市」のようなものを除いて、歴史的な経緯を持った地名であれば、せいぜい渡来人との交流による王朝名の付加くらいだろう。
「高麗(こま)」は最たるもので、東京都狛江市や山梨県○巨摩郡が著名な例だ。
埼玉県旧高麗郡は高句麗との縁でついた名前で、「高麗川」が流れ、現在の日高市域にはかつて「高麗村」と「高麗川村」があった(日高市とは日和田山との合成地名)。
日高市に高麗神社が現存し、高麗駅と高麗川駅などが存在する。
また、「高麗」以外だと「新羅」は埼玉県新座市などに影響を残した。

こういった例くらいに終始しており、ましてや諸外国による攻めの残滓など有り得ない。
逆に、日本は蝦夷地の開拓で北海道のアイヌ語での村落の呼び名に漢字を当ててきた。
台湾でもいくつかの都市名に日本統治時代の名残がある。
高雄市が有名な市名だが、元々"タカウ"の発音に「打狗」という漢字を大陸の者が当てたわけだが、見ての通り、字面で動物虐待じみている。
このように「犬を〆る蛮族が住まう地」と大陸の者が台湾を嘲笑したいがために「下品・下衆・下劣・愚劣・低劣・低俗・卑俗」極まりない汚名を着せたのだ。
これを日本が同等の音価に高尚な「高雄」を振ったのである。
それが今尚、かの台湾の地にて親しまれていることを噛みしめねばならない。



地名学"Toponymy"については興味がある分野だろう。
しかし去年の6月に仏教へ強く興味を持ったあたりから、地理・地名関連は疎遠にになっただろうがまあ、元々知りたいことの外郭を掴めて満足したから飽き気味だったのかもしれない。
地名学とは、地理・歴史・言語の坩堝で、私のような者であれば面白く、一部国粋主義的であれば日本国内の地名について思索に耽るのは楽しい時間なはずだ。
ただ、今回の記事では言語学および歴史学的アプローチの側面も強い。
これらの分野が好きな者ならば、赴きある地名というものにも自ずと造詣が深くなる。

なお、地名学"Toponymy"の"Top"って何だろうと思ったのだが、これについてもいつもの横野節にて説明したい。
"Top"はギリシャ語根の一つだが、"Utopia"などに用いられる「場所」を意味する語根である。
2014年6月、我が「寂光園」を英訳したいと思ったときに"Pseudotopia"が浮かんだ。
これもギリシャ語根での造語作成の法則に忠実になって作ったのであった。

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