2018年12月5日水曜日

MIDIピッチベンドで音楽の周波数を調整するための数式 (440 → 432 Hzでの例)

MIDIのピッチベンド(Pitch bend)で特定の周波数を再現する方法を考えた。
ここでは、インターネットで讃嘆されることのある 432 Hz (432ヘルツ)を再現しよう。
そもそも、現代の音楽のチューニング基準は 440 Hzであるとされ、それはMIDIキー (a.k.a. Scientific pitch notation)でいうと C4ラ (音名"la"のこと 英語: A; A4 日本語: イ)であるということを念頭に置く必要がある。
つまり、普段の音楽が一般的に440 Hzであり、それに対して432 Hzという別の基準の音楽もあるということである。
それは楽器のチューニングにおいて、その C4ラ を432 Hzにして実現されることとなる。
DTMで音楽制作をする場合の手短に音を432 Hzに変える手段を、私は望んだ。
ここでは、MIDIで簡単に432 Hzを再現する方法を説明しよう。

方法の説明 (数式の求め方)

440 Hz と 432 Hzの数値上の差は8である(1st: 440 - 432 = 8)。
ピッチベンドは8191 ~ 0, -1 ~ -8192の数値で構成される。
この+-値は、キー(ピアノ鍵盤相当、半音)でいえば上下2つ分の音の差(全体で4つ分)が有ると定義される(ソフト等の使用環境にもよるらしいが一般的にデフォルトではキー2つ分=2半音という、ここではその前提)。
i.e. ピッチベンド -8192 = キー -2


キー -2は、周波数440 Hzの置かれた C4ラ (la 英語: A 日本語: イ)から数えて2つ下の C4ソ (sol 英語: G 日本語: )である。
その C4ソ の周波数は 391.995...という無理数らしく、ここでは四捨五入して392 Hzとする。
周波数440と392は絶対数48の差が有る(2nd: 440 - 392 = 48)。
先ほどの周波数440と432の整数は8の差が有ることを思い返し、両者の割り算をしたいが、ここでは8を48で割り、0.16666... という数値を求めた(3rd: 8 / 48 = 0.16666...)。
これをキー-2 = ピッチベンド -8192に掛け算をすることで、私は周波数 432 Hz を再現するピッチベンドを近似値として -1365に定めた(4th: 0.16666 * 8,192 = 1,365.27872...)。

以上の如く、周波数 432 Hz の音楽をMIDIで再現したいときはピッチベンドで-1365 (または微調整で -1366)を指定すればよい、と結論付けておく。

(440 - 432) / (440 - 392) * 8192 = 1365.27872... ≈ 実用の整数-1365





検証①
計算結果の数値をピッチベンドに適用し、その音声を録音するか、音声ファイルに出力する。
何らかの波形編集ソフトで「スペクトラムアナライザ(スペクトラムアナライザー)」などを用いて具体的に周波数を確認してみるとよい。



こちらは、そのようにピッチベンド値 -1365を指定して実際に再生された音楽の、音声比較動画である。
ソフトウェアはPraatであり、スペクトログラムで音声を視覚化(可視化)している。

「人間の認知機能の主観性(subjectivity of cognition)」を重んじる立場から言えば、ただ従来に440 Hzとされる何らかの音楽を主に聴いた人が、その人の感性の差によって、432 Hzとされる何らかの差異に好印象を覚えたり悪印象を覚えたりするくらいのことと私は考えている。
だから、もし臨床実験をして432 Hzに良い健康的効果(癒し効果など)が確認されたという客観的な統計結果が取れても、それを解釈することに関しては客観的な善悪が問えないと私は考えている。
現今の世間では、432Hz癒し云々・440Hz悪魔云々・440Hzナチス云々という説(1, 2)があり、かつまたそれらが陰謀論の扱いを受けている。
一応、主観性を重んじる立場であるからこそ、この音楽動画を示すことをしておく。
実験音楽"Experimental music", 認知音楽学"cognitive musicology", 音楽神経科学"neuroscience of music"の趣旨についても考慮する。



検証②
A = 432 Hzであるときの他の音高の周波数を書いているページが外部にある。
こちらを客観的情報の一例として比較してもよい。
https://pages.mtu.edu/~suits/notefreq432.html

※2018年12月18日にWaveToneというソフトをダウンロードした。当記事の目的に関連した説明のみをする。これは任意の音楽ファイル(wav, mp3, ogg等)を開く際に「基準周波数」の値を指定することで、そのソフトの画面内のピアノロールにキーごとの周波数の値(小数点第二位まで)がピアノロールより上のバーに表示される。このソフトの「基準周波数」という項目は、そこに入力された周波数の値がC4ラ (ソフト内ではA4)であることを意図している。各自で任意のピッチ基準のキーごとの周波数が調べたい場合、このソフトを参考に用いてもよい。



背理法による裏付け?



備考: ピッチベンド -8192(どの環境であれピッチベンドの最も低い数値)がキー -2 (-2半音)でない環境での計算のためには、適宜にその分のC4ラの下の音を用いて計算する。つまり、仮定的な記号で数式を示し直すと、
1st: 440 - H = h →
2nd: 440 - M = m (このmの数値はhよりも高くあらねばならない)→
3rd: h / m = d →
4th: d * 8192 = P となる(あくまでも近似値なので実際に用いる数値は四捨五入か当人聴覚で適切な整数に調整)。



備考: もしピッチベンドの両端がキー2つ分のみである人が、キー2つよりも外の周波数(392 Hz未満と494 Hz以上)が基準値である音楽を作りたい場合、音楽全体のMIDIノートのキーの位置を近いところへずらす(これは普通の作曲プロセスで転調のための作業に同じ)かキー設定を変える必要がある。基本的に、キー1つ分よりも狭い周波数が基準値である条件においてその計算を行う。要するに、440 Hzから見た432 Hzとは、キー0.32ほど下の音であり、それは普通の楽器の「1オクターブを構成する12個のキー」で鳴らし得ない音であり、MIDIのピアノロールもそう作られていないから、ピッチベンド-1365 (先の仮定記号P)という近似値を求めた。



備考: MIDIで440 Hzよりも高い周波数が基準値である音楽を作りたい場合、それに必要なピッチベンドも + (正)の数値となる。その場合、先の仮定記号のうちh, mはそれぞれ-hと-mとなるが、そのまま割り算をすれば負の数同士の割り算が正の数になるという中学校一年の数学で習ったような話の通り、dそのものとなる。後は、ピッチベンド8191 (0を1と同じように数える方法では厳密にマイナス時と同じく8192でなくてはならないとも考えられる)に掛け算を行えば、Pの数値が出るので、この場合も近似値を求めつつ、正の数字のまま用いる。例えば444 Hzを望んで主要部と同じ計算方法(この場合はキー2つ上のC4シ = 英語: B 日本語: の周波数の近似値をMに当てる)を試すと、606.74...という数値になったので、606か607を適宜に用いればよい。



備考: A = 440 Hz よりも1オクターブ低い音(C3ラ = A3)の周波数は220である。かつ、「検証②」に示されるサイトのページ内には、A432 (432 Hz)よりも1オクターブ低い音(C3ラ = A3)の周波数は216 Hzである。これらはC4ラ = A4 であったときの周波数8の差が、半分の4になるなど、整数の差が等分になっている。オクターブ差は、1オクターブ高い場合が同様に等倍である。無理数の場合も、オクターブの差がある分に、欠けた端数以下まで等分や等倍となる。例として、C3ド (英語: C 日本語: ハ)は 261.6255... Hzだが1オクターブ低いと130.8127... Hz、1オクターブ高いと523.2511... Hzである。それらは実際にそうやってA = 440Hzにチューニング・調律された楽器の音を鳴らして測定しつつ、それらの音が適切な和音を鳴らした際に不協和音にならないことを聴覚で確認した上で、数学的な道理をも鑑みて学問的に決定された数値と考えてよい。



他の参考事項
・1オクターブを構成するキーの周波数に適用された十二平均律・2の12乗根 (twelfth root of two)
・キー4つ離れ(5度)やキー6つ離れ(7度)の位置でノートを重ねてパワーコードを鳴らすこと



雑学: 432 Hz を良いものとして推奨する論調は、数秘術 (numerology) の一種から出ているかもしれない。比較の材料に「ソルフェジオ周波数 Solfeggio frequencies (日本語訳書にレオナルド・G・ホロウィッツ著「ジョン・レノンを殺した凶気の調律A=440Hz」 ISBN 978-4198633431がある)」のドグマ・教義 (1, 2) がある。英語タイトル The Book of 528: Prosperity Key of Love "2. 528, John Lennon and the Church of Satan" (ISBN 978-0923550783)。 「自然物としての音」または「デジタルな信号の配列から出力される音」が別個である場合に、432という規則的に見える数字列や174-285-396, 417-528-639, 741-852-936といったアナグラム数字列を当てても、医療的に有益な効果 (benefits) があるとは言えない。先述の通り、「癒し」などの効果を求めるにも、「もし臨床実験をしてそれが確認されたという客観的な統計結果が取れても、それを解釈することに関しては客観的な善悪が問えない」し、原因の積極的な解明や説明は、既に実証されたと医学界で承認される方法に比べて困難である。せいぜい「効能書き」を見た個人にプラシーボ効果 (placebo effect) があるのみではないか?他の事項については「ツッコミ」をしないでおく。





起草日: 20181021

当記事の途中(検証①)においても埋め込み表示してある動画は、当記事の内容の補強として投稿された。
https://www.youtube.com/watch?v=Pn9bFeIhdLE

関連記事
2014年10月5日: MIDIにおいて再生時間を算出する数式・公式のメモ
https://lesbophilia.blogspot.com/2014/10/midi.html

後年の追記
キー key の意味をカラオケ的な感覚(ネット上の用例の曖昧な認識)で理解していたり、ピアノ鍵盤の白鍵・黒鍵 (keyboard with white keys and black keys) の類推をしたり、という私の誤用が見受けられる。
カラオケ的な「キー 」であっても、これは調や移調のためのシステムに関して言われるようである。
括弧で「半音」とも併記しているが、こちらのみが一義的に正しい、と修正したい。
他の音楽用語に詳しくない諸氏にも、改めて正しく覚えていただきたい。

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よって、2019年5月12日からコメントを受け付けなくしました。
あしからず。

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