[i VII VI] (e.g., Am G F) はコードの主音が全音ずつ下がり、次が [v] や [V7] (属七和音 dominant seventh) である場合もダイアトニックな下がり方として見られる。
それらは主音の度数 (degree) や音名 (note/pitch name) がそのまま下降している例である。
当記事では、主音の度数や音名が下降するとは限らない構成音の半音ずつ下降する進行を例示する。
また、稀ではあるが、上昇する進行をも例示する。
以下から、度数表記と、調がAm = C (イ短調=ハ長調) であるときの音名とで説明を行う。
[i V v IV iv i II V (Am E Em D Dm Am B E)] という基盤として8つの和音で構成されるコード進行があるとすれば、そのうちの構成音が半音ずつ下に移動(下降、下行)しており、これを「半音移動進行」の一類型と見ることができる。
ベースライン (bassline) として抽出して: [I VII# VII VI# VI V IV V (A, G#, G, F#, F, E, D#, E)] となる。
そのコード進行のうち、6番目をIII (C), 7番目をIII- (Cdim) とするなどでも、同様に半音ずつ下降する状態が保たれる。
2020年1月以前に私は、このようなコード進行の名称とその具体例を求めていた。
東方原曲 (東方Projectのゲーム作品群におけるBGM) にも、基盤として8つの和音で構成されるコード進行として、構成音が半音ずつ下降する例がある。
th15_13-29小節 [i III+ VII IV VI VII i],
th16_13-25小節 [i III+ III IV VI i vii#- IV],
th17_13-25小節 [i III+ III ii VI V ii V] (th17_12も).
2015年8月に正式版のある「東方紺珠伝」以降で作者ZUN氏が弾幕STG作品の6面(最終ステージ)とそのボスのテーマソングに用いるようになったようである。
それ以前では6面で使われず、th11_05(2面ボス)など、ごく僅かである。
これらは、東方ファンの界隈で「下降クリシェ進行」というように呼ばれる。
例:https://twitter.com/boga0817/status/925391412333441025 (「亡我の東方的音楽理論備忘録」) 上記URLのツイートに載る動画の1曲め (不明、類例はth08_15) は後述する「ライン・クリシェ」のストレートな例と見られる。
2曲め (不明) と3曲め (th11_05) は「下降クリシェ進行」と東方ファンの界隈で呼ばれるものに当たる。
なお、音楽学で基本的に、クリシェは少し印象が異なる。
単一のコードの一構成音が下降または上昇(下行、上行)のクリシェ対象になり、他の構成音に変化は無いことが指される。
音程(インターバル interval)は半音に限らず、全音についても含まれるので、「半音下降クリシェ」などと接頭語が用いられたりする。
"line cliché" (ライン・クリシェ) と呼ばれるものはギターやピアノの「演奏」の側面に強く関わっている。
他の参考:
https://sakkyoku.info/theory/cliche-01/
https://sakkyoku.info/theory/cliche-02/
当記事では、以上の調査結果ある経緯を踏まえ、半音移動進行を私の把握する楽曲から例示する。
全てをすばやく理解する必要は無いので、少しずつシーケンサーに打ち込むなり、楽器で演奏してみるなり、試してどのようなものか、確認されたい。
・移動の起点である音符–ノートを1として数え、そこから1回の移動をカウントして2を数える。一方向のみの移動が数える対象になる。私のDAW環境でのピアノロールには、そう数えたくなる音楽ノート表示がされるので、慣習的に私はそうカウントしてきた。
・度数/音度表記は、英語版Wikipedia - Roman numeral analysis, および Chord letters (or chord name/names) を参考にした。+ (プラス) は augmented, aug コードであるなど、合わせた。 ・度数に用いるローマ数字は、小文字 i と大文字 I (英語カナ:アイ) のように、一般的なローマ字(ラテン文字)であり、Ⅰ U+2160ではない。ピアノの白鍵をダイアトニック・スケールであるAm = C (イ短調=ハ長調) として:i は A minor triad chord (イの短三和音)、I は C major triad chord (ハの長三和音)となる。世間では、ローマ数字の大小を設けずにメジャーに M, マイナーに m (英語カナ:エム) を付ける場合が多いので、その点は少し独特だが、それ以外の記号の用法は、上掲リンク先を参照。 ・文字コードに関する問題のある環境(私の使用する特定のソフトウェアを含む)を考慮して:"ø is used for half-diminished"と私が用いたかった文字 U+00F8(ノルウェー語の母音字やIPAの記号の一つ;⌀ は直径、∅ は空集合)は、ギリシャ文字「ファイ(フィ、古代ギリシャ語で有気音ペー)」小文字 φ U+03C6とした。なお、Δ U+0394はギリシャ文字「デルタ」大文字であり、三角記号 △ U+25B3ではない。
・任意の和音–コードの根音に対する六度 (VI度) の音が付加されている (add6? added sixth) と見られる部分では、表記として短六度 (minor sixth) のために m6, 長六度のために Δ6 (major sixth) を採用した。七和音のうちで長七和音は [IΔ7], 属七和音は [I7], 短七和音は [i7] とする。理論上考えられるが使われないコード「短三和音に長七度を加えた和音」は [iΔ7] とする。
・同じ小節のうちに他のコードが、その順序で用いられていることを表すというために、スラッシュ / を使う案があったが、これは分数コードやスラッシュコード (slash chord) と呼ばれるものに使われるようなので、やめる。カッコ内を小節のためにコンマで区切り、半角空白–半角スペースで同じ小節のうちのコードを分けることにした。同じ小節のうちで占める長さに関してはここで表さない。[Vsus4 V] という例からは、sus4解決 (resolution of a suspended fourth) の終止 (cadence) が同じ小節で行われていると理解する。
・フラットやシャープなどの増減記号(調号、臨時記号)を、ハッシュまたはナンバー記号 (hash or number sign) # U+0023 をシャープのために用いた。正しくは ♯ (U+266F) である。フラットは ♭ (U+266D) でよいが、世間の一部では b (Bの小文字) を代用する場合が有る。
・フラットやシャープなどの増減記号を、度数では前にする慣行がある。♭V度 (bV), ♯IV度 (#IV) などとするし、和名の減五度(減5度)、増四度(増4度)はその直訳名称に思える。五線譜で増と減の記号を音符に対して左に記すことから来ているようだが、CからBの音名では後に記すという人が度数に対してそうする積極的理由を言うことは無い。私は度数の後に増と減の記号を記す。
7半音下降、識別番号686から抄出される短調での進行 □ |
7半音下降、識別番号20から抄出される短調での進行。
[i, V. vo, IV, ivo, III, II, V]
7半音下降、識別番号207から抄出される短調での進行。
[i, V, v, IV, iv, III, II, V]
7半音下降、識別番号437から抄出される短調での進行。
[i, V, v, IV, iv, III, iii-, V]
4半音下降、識別番号468から抄出される長調での進行。
[I, V, VI#, IV, I, V, vi, IV]
4半音下降、識別番号507から抄出される長調での進行。
[I, iii, iiio, ii, IV V, iii vi, IV, V]
7半音下降、識別番号635から抄出される長調での進行A。
[I, iii7, iiio, vi7, iv7, I, II7, Vsus4 V]
7半音下降、識別番号635から抄出される長調での進行B。
[IΔ6, iv7, I, II7, IV, III7 vi, IV, V# VI#]
6半音下降、識別番号640から抄出される短調での進行。
[i, V, vo, iv, i♭o7, III, VI, V7, VIΔ7, III V7]
; 曲全体は長調なのでこうとも表記できる:[vi, III, iiio, ii, vi♭o7, I, IV, III7, IVΔ7, I III7]
7半音下降、識別番号675から抄出される短調での進行。
[i, III+, III, IV, iv, III, II, VI]
7半音下降、識別番号686から抄出される短調での進行。
[i, V, VII, IV, iv, III, II7, V]
7半音下降、識別番号713から抄出される長調での進行(識別番号288も同じ) 。
[I, V, v, IV, iv, I, II, V]
5半音下降、識別番号725から抄出される短調での進行。
[im6, vii#Δ6, viiΔ6, I7, IVø, iv7, ivφ ivo7, IIIΔ, iii#o7 iv v]
; 曲全体は長調なのでこうとも表記できる: [vim6, v#Δ6, vΔ6, VI7, IIø, ii7, iiφ iio7, IΔ, i#o7 ii iii]
; 非標準的な数え方では、最大で8半音下降を持つ。
5半音下降、識別番号765から抄出される短調での進行。
[i, V, v7, ii, VI, IIIsus4, VII7, III]
; 曲全体は長調なのでこうとも表記できる:[vi, III, iii7, VII, IV, Isus4 V7, I]
7半音下降、識別番号820から抄出される長調での進行。
[I, Vadd4, I7, IV, iv, I, ii, Vsus4 V]
6半音下降、識別番号921から抄出される短調での進行。
[i, V, VI, ii, iv, v, ii, IV]
7半音下降、識別番号957から抄出される長調での進行。
[I, vii, VI#, vi, V#, v, iv#, V]
4半音下降、識別番号1013から抄出される長調での進行。
[I, iii, iii-, vi, IV, I, ii, V]
3.5半音下降、識別番号1016から抄出される長調での進行。
[Isus2=Vsus4, V7, v7, IV V]
; 3半音下降ライン・クリシェにも当たる。前3つの組が残り2つの組よりも1つあたりが2倍の長さであること(2 + 2 + 2 + 1 + 1 = 8小節相当)は、数字の扱いに難しさを覚える。ここでは半音移動数を小数にした。後掲の855では数字の扱いが異なる。
6半音上昇、識別番号329から抄出される長調での進行。
[I, IV, II, V, III, vi, II, V]
6半音上昇、識別番号264から抄出される短調での進行。
[i, iv, IV, v, V, i, IV, V]
4半音上昇、「メジャー上昇ライン・クリシェ進行.mid」で示される長調での進行。
[I, ii, vii, iii] ([I, ii, vii, iii6]とも、終止形は[I, ii, vii, iii V])
5半音下降ライン・クリシェ、「短調カノン進行と下降ライン・クリシェと下降クリシェ進行.mid」で示される短調での進行。
[i, VII#+, III, IV, VI, vi#o, vii, vii#o V7]
; ライン・クリシェでないクリシェとしては8つに及ぶ。3半音下降ライン・クリシェと2半音下降と3半音上昇で構成される。
4半音下降ライン・クリシェ、識別番号11から抄出される短調での進行。
[i, VII#+, III, iv7, VI, v7, VI7, VIIsus4 VII]
; 曲全体は長調なのでこうとも表記できる: [vi, V#+, I, ii7, IV, iii7, IV7, Vsus4 V]
; ライン・クリシェでない半音下降としては6つに及ぶ。
4半音下降ライン・クリシェ、識別番号73から抄出される長調での進行。
[I, IΔ7, I7, IΔ6=vi7]
; 曲全体は短調なのでこうとも表記できる: [III, IIIΔ7, III7, IIIΔ6=i7]
4半音下降ライン・クリシェ、識別番号421から抄出される長調での進行(冒頭4小節)。
[Iadd9, iii7, iiiφ, VI7 x iisus4, ii, I#+, Vsus4 iiφ, V x viiφ]
; 後半4つは2半音下降ライン・クリシェと2半音下降を持ち、同時に4半音下降を持つ。
2半音下降ライン・クリシェに似た何か(ダイアトニック版?)、識別番号658から抄出される長調での進行。
[I, IΔ7, IΔ6, I, IV, IVΔ7, IVΔ6, V]
; ダイアトニックまたは全音ライン・クリシェとする場合、4 + 3下降ライン・クリシェを持つと見られる。
4半音下降ライン・クリシェ、識別番号855から抄出される長調での進行。
[I, iii, iiio, IV IV7, iv7 ivφ, iii7 i, ii7, V viio]
; ライン・クリシェでない半音下降としては6つに及ぶ。3下降ライン・クリシェと3半音下降で構成される。他にも2分音符で4半音下降を持つ部分が2つある。
動画で確認できる例
"Dominus Immensus"の「歌詞が後で与えられた音楽部門」でも、以下のように、半音下降がある。
MIDIシーケンサー"Domino"でのピアノロールではなく演奏モニタ表示がされている。
Aメロ相当の部分で以下のように、3半音下降、短調での進行がある。
[i, V7, VII, IVsus4 IV v, VI, III, II7, V]
; 4番目の小節のIVsus4 IV v部分をIVのみにすれば7半音下降を持つ。
Bメロ相当の部分で以下のように、6半音下降、長調での進行がある。
[I, V, VI#, IV, V#, II#sus4 II#, II7, III7]
; 曲全体は短調なのでこうとも表記できる: [III, VII, I#, VI, VII#, IV#sus4 IV#, IV7, V7]
; 非標準的な数え方では、7半音下降を持つ。
; Aeolian mode や natural minor scale の目線を持つ人は [I, V, VIIb(bVII, ♭VII), IV, VIb(bVI, ♭VI), IIIbsus4(bIIIsus4, ♭IIIsus4) IIIb(bIIIsus4, ♭III), II7, III7] といった具合に表記するであろう。
英語説明案、2020-06-28起草 An explanation in draft in English, writed since 28 June 2020
A Criticism for Musicology and "Gerpan" the New Chord Progression claimed
The chord progression is called "descending cliché progression" (下降クリシェ進行 kakō-kurishe-shinkō) among Japanese-speaking Touhou fandom/fans.
The video plays the progression in A minor.
One pitch in included chords is descending in semitone/half-tone per 1 bar/measure:
A (tonic), G#, G, F#, F, E, E♭, E (the final pitch is only ascending/going up)
So it is called "cliché" (the article "クリシェ" Kurishe in Japanese Wikipedia describes also in whole tone, not only semitone), correctly what? "pseudocliché" (pseudo-cliché)?
An English term "line cliché" (ライン・クリシェ) suggests other skill (e.g. playing guitar and piano), this is not; but this is right for an original idea.
"Descending in semitone per 1 bar" as in one typical example:
Am E Em D Dm Am B E
A Roman numeral analysis for the progression can be given:
i V v IV iv i II V (or vi III iii II ii vi VII III in major tonic key)
It has a minor difference like as the sixth–seventh chords are III (I = C)–iiio (io = Cdim).
Other typical example:
Am E G D F Em B E, Roman: i V VII IV VI v II V (or vi III V II IV iii VII III in major tonic key)
ZUN, the founder of Touhou/Toho Project is using "descending (semitone) cliché" function, but it is limited in 4–6 chords from the beggining:
th15_13 bar 29 i III+ VII IV VI VII i
th16_13 bar 25 i III+ III IV VI i vii#- IV
th17_13 bar 25 i III+ III ii VI V ii V
* III+ (augmented triad) はi = Am の時に G#aug, Eaug, CaugのいずれでもあるうちのG#aug V#+ で表記されやすい。
Misfortunatelly, the progression is not analyzed/researched in English-speaking musicology yet/never.
I have a view that most of the progression is used in Japan for video game music (ゲーム音楽) and songs/soundtracks of music video game (音ゲー音楽).
I do not know the progression was used (or it appeared by chance/accidentally) in Western classical music.
Japanese-speaking video game fans say "エモい", "ドイツっぽい" for the progression.
"ドイツ" (Doitsu) means Deutschland (Deutsch/Deutsche), in English is Germany (or German language, culture or music).
I can call the progression "descending pseudocliché progression" or "Gerpan progression" (Gerpan is a portmanteau word, made of German/Germany + Japan; also Jarmany/Jarman).
There are alternatives/alterations/variations:
@ここにコード例の列挙。動画で紹介するもの限り?動画投稿を前提にするのやめる?
There are versions in major key which have "descending (semitone) cliché" function, those can be called "(Pachelbel's) Canon-cliché progression":
@ここにコード例の列挙。動画で紹介するもの限り?動画投稿を前提にするのやめる?
Three songs (No. 635, 713 and 957) have the setting that a rainbow can be seen (by a synaesthesia), or something far/faraway/fantastic; so I can call the progression "rainbow-show progression" or "far fantastic progression".
It is self-explanatory: extraordinary, unrealistic, supernatural; though it is not overall.
The intro of Soviet (Russian) song "Katyusha" (composed by a Soviet Jewish man) has a similar chord progression, which is using "descending (semitone) cliché" function limited in 6 chords from the beggining:
Am E Gm D Dm Am E Am, Roman: i V vii IV iv i V i (or vi III v II ii vi III vi)
A few days ago, I am aware ah...
It means chromatic line, have descending or ascending, and chromaticism.
Okay, I see. It is a type of "descending chromatic line progression".
Criticism for English Musicology:
The name "Musicology" is not correct to Latin and Greek etymology (intuitive and pragmatic for common people, not intellectual).
Musicologists did not research for who calls "line cliché" never.
Musicologists did not create website which hosts "open-chord music" (like open-source software) system. (just kidding!)
How do you think the present and future of popular music?
以上の「英語説明案」はボツ案文章。
KAJA (Masahiro Kajihara, 梶原正裕) 氏によれば、80年代や90年代と見られるPCゲームにも、ここでいうようなコード進行である「半音下降進行」が使われてきたようである。
また、私的な体験であるが、2020年11月に私がポケモンのルビー・サファイア・エメラルド (RSE) のプレイを振り返ると、ルネシティのテーマBGMの9小節め以降(調はB minor)は「半音下降進行(短調での7半音下降を持つ)」と確認された。
そのゲームは10歳未満の時に私がプレイしてもいたので、当時にさえ聴いていたことは、意外であった。
こちらの理解で、こういうコード進行と推定される: [i, VII#+, VII, IV, IV-, III, i-, III VII]
呼称に関する注意点
[i V v IV iv i II V (Am E Em D Dm Am B E)] というコード進行を持つ曲に私は長年、興味があったので、そのコード進行について「(パッヘルベルの)カノン進行」と似た響きで短調–マイナースケールなので「短調カノン進行」と便宜的に呼んだことが最初である。
東方原曲にも類例があることで東方界隈を調べ、その呼称を受けて「下降クリシェ進行」と呼んだりしたが、更に長調–メジャースケールの例も多いと知り、「構成音半音移動進行」と総称して「メジャー半音下降進行」や「マイナー半音下降進行」と私の方で呼ぶことに至った。
上昇の例ももちろん、少しだけ例示されているので、総称が「構成音半音移動進行」とならざるを得ず、[i V v IV iv i II V (Am E Em D Dm Am B E)] のような典型的に構成音半音下降と感じられる例は「下降クリシェ進行」などの通称が伴う、と今で私は位置づけている。
通称としても「短調カノン進行」が容れられないと私が思う理由は、「(パッヘルベルの)カノン進行」が音程としての全音=長2度と半音=短2度とを伴った「ダイアトニック (diatonic)」の下降を伴うものであり、全てが半音であるものは「クロマティック (chromatic クロマチック)」に他ならないからである。
この2つの概念は、和声学、和声理論の対立要素の代表格であるし、含まれる和音–コード全般もダイアトニックなものしか、「(パッヘルベルの)カノン進行」は採用していない。
一般にいう「カノン進行」は「パッヘルベルのカノン」から抽出された長調でのコード進行であり、典型的に以下である:
[I V vi iii IV I IV V (C G Am Em F C F G)]
;この時、全音もといダイアトニック下降ベースライン: [I, VII, VI, V, IV, III, IV, V (C, B, A, G, F, E, F, G)] を伴う。
「短調カノン進行」の反証では、実際にダイアトニックな下降を伴う8つの和音を含んだコード進行からもできる。
典型的に以下である:
[i, v, VI, III, iv, III, iv, v (Am, Em, F, C, Dm, C, Dm, Em)]
;この時、全音もといダイアトニック下降ベースライン: [I, VII, VI, V, IV, III, IV, V (C, B, A, G, F, E, F, G)] を伴う、という条件を満たす。
識別番号941から抄出される短調での進行を示す:
[i, ,vii#-, VI, v, iv, III, ii-, iv]
識別番号560から抄出される短調での進行を示す:
[i, v, VI, III, iv, v, VI, VII]
これらが同じ条件を満たした「短調カノン進行」とその変形(亜型)になると見られる。
560の楽曲は、実際に再生すると、それが短調であるのに長調のカノン進行と何も変わらないように錯覚するほど、積極的なカノン進行らしい響きがある。
Glossary
長調クリシェ; line cliché in major key.
短調クリシェ; line cliché in minor key.
下降-, 下行-; descending.
上昇-, 上行-; ascending.
全音, 長二度; whole tone, major second.
半音, 短二度; semitone, semi-tone, minor second.
cf., hemitonic, anhemitonic scale.
ダイアトニック; diatonic.
ダイアトニック・スケール, 全音階; diatonic scale.
クロマティック, クロマチック; chromatic, adv. chromatically.
クロマティック・スケール, 半音階; chromatic scale.
cf., chromaticism, hemitonic.
A "chromatic descending bassline" in "Stairway to Heaven" by Led Zeppelin, the English Wikipedia says (2020年11月26日にたまたまドビュッシーの1曲のカバーMIDIをBitMidiというサイトでダウンロードすると、"Stairway to Heaven"の曲のカバーMIDI"73561_08.mid.mid"(拡張子の重複)が関連ファイルに出てきた;この曲は冒頭からその半音下降ベースラインがあるが、何かがペンタトニック pentatonic であるとWikibooks - "Guitar/Scales". oldid=3454107. に記されている;当該ファイルでの84–92小節や101–109小節のボーカル代用楽器のメロディがそれっぽいがギターの教科書ページにボーカルメロディの話をするか?).
↑"Glossary"に無関係の括弧注釈で込み入ったが、下降ライン・クリシェがたまたまドビュッシーの1曲のカバーMIDI"debussy-clair-de-lune.mid" (原曲: Suite bergamasque 3. "Clair de Lune" by Claude Debussy) に見られることを報告しよう。当該ファイルの38–39小節(8分の9拍子)にアルペジオでコードを鳴らしながら、低いノートがベースラインのように下降している。[Im6 ivadd9 ivΔ7 iv7 ivφ V# VI# iv7 V#Δ7] 変ニ長調。下降の音程としては全音と半音とが見られるが、半音だけを抽出しても4下降ライン・クリシェである。
起草日:2021年1月8日
2020年1月21日から本格的に調査を始め、2020年6月28日に「英語説明案」英文レポートを起草したが、その後も色々な説明や事実が判明し、当記事では当記事でのまとめ方となった。
2021年2月まで数ある半音移動の中でも半音下降のみを「クリシェ」と単位のように呼ぶ慣行が私にあったが、それをやめてこの記事の文も原案から書き直した。
2021年3月1日、相変わらず音楽記事に頻出する東方Projectの話題だが、新作発表を私は見た。
18作目「東方虹龍洞」でも6面あたりで構成音半音下降進行が見られるか、注目する。
→無いと思います。
2021年3月3日になってth11_05「緑眼のジェラシー」について右記のページ https://w.atwiki.jp/tohomusicdb/pages/152.html を見ていると、『イーグルスの「ホテルカリフォルニア」にAメロのコード進行が出てくる』というコメントが見られた。
以下のようにその進行が6半音下降(その後1回ずつ上がって下がる)を持つという共通点を持つと分かるが、和音の音度としては少し異なっていた。
「緑眼のジェラシー」は冒頭から、以下のように、6半音下降、短調での進行がある。
[i, V, VII, vii, VI, i, iv, V (Em, B, D, F♯m, C, Em, Am, B)], in E minor = G major; ホ短調=ト長調
The Eagles の "Hotel California"は冒頭から、以下のように、6半音下降、短調での進行がある。
[i, V7, VII, IV, VI, III, iv, V7 (Bm, F♯7, A, E, G, D, Em, F♯7)], in B minor = D major; ロ短調=ニ長調
説明に対応する2曲の実際のピアノロール □ |
前者は2008年5月25日にリリースされた東方地霊殿の体験版が最初の発表であり、後者は1977年2月22日にリリースされたアルバム Hotel Californiaに収録される。
いわゆる「下降クリシェ進行」=構成音半音移動進行または半音下降ベースラインの最古の例は何か? 当記事の本文で示した中では、Led Zeppelin の1971年11月8日にリリースされたアルバム(無名4作め、通称 IV)に収録された"Stairway to Heaven"である。
「英語説明案」では、ロシア、ソビエト連邦の「カチューシャ (Катюша)」イントロ部分(1938年初演の時からあるか不明)を挙げており、これは6半音下降のコード進行である。
[i V vii IV iv i V i (Am E Gm D Dm Am E Am)]
東方Projectの中で半音下降ベースラインの最古の例は、東方夢時空(体験版と製品版どちらも1997年)のTh03_04 "Reincarnation" (5小節め、6半音下降、D♯m短調での進行)であろう。
これらは耳コピでも和声の確認をできるが、"Stairway to Heaven"に私がしたように、第三者によるMIDIファイルや楽譜などを探して参照するなどでもよい。
こういった調査は音楽作品を無機質に研究対象とするコーパス音楽学(MIDIファイルや譜面への批判研究も含まれそう)、比較和声学と呼ばれそうである。
ある程度、疑問を解決したいので、私はこの調査を続けて一定の結論を持った。
当記事の本文でそれを示したつもりではあるが、個人的に満足しきれないので、こうして調査を続ける。
それは、「構成音半音移動進行という総称を与えたいコード進行の一群があり、個別には世間での通称もある」ということである。
結果的な曲例というかコード進行の例を示した中で、どうしても私の管理する多くの楽曲の中では「短調で同名の短和音の主音からの半音下降進行」が多くなった。
世間の著名な曲にして"Stairway to Heaven", "Hotel California", 複数の東方原曲は、この現象を代表している。
「長調で同名の長和音の主音からの半音下降進行」もそこそこあったわけであるが、それを有する曲例635には奇異な特徴の部分も見られた。
「長調で同名の長和音の長六度を加えてそこからの半音下降進行」というものであり、本文での635進行Bとして示した。
半音下降ベースラインとともにその構成音を持たないコード進行 □ |
ちょっと次回予告のようなことを記す。
次回記事のタイトルは、『IV-VトリプルシャープIV-V進行、同主調の和声型転調、三全音転調』と予定される。
https://lesbophilia.blogspot.com/2021/04/harmony-variable.html
その中の「IV-VトリプルシャープIV-V進行、またはIV-V短三度上げIV-V進行;で何らかの次の和音」という節で、半音下降ベースライン [F, E, D♯, D], in Am = C (当該記事ではもっと正確で詳細な表記もする) を例示するので、期待されたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿
当ブログのコメント欄は、読者から、当ブログ記事の誤字・脱字の報告や、記事の話題に関する建設的な提案がされる、との期待で解放されていました。
しかし、当ブログ開設以来5年間に一度もそのような利用がされませんでした (e.g. article-20170125, article-20170315, article-20190406)。
よって、2019年5月12日からコメントを受け付けなくしました。
あしからず。
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。